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  • 年々減少するガソリンスタンド、生き残るための新たな価値提供

    ガソリンスタンドの新たな価値

    全国のガソリンスタンドは、ピーク時の1994年度には6万店を超えていました。しかし、最近は3万店を下回っている状況です。

    ガソリンスタンド減少の背景

    ガソリンスタンドが減少している背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。
    主な要因は、ハイブリッド車や電気自動車の普及により、ガソリン消費量が大幅に減少しました。低燃費化により給油頻度が減少し、ガソリンスタンドの利用機会が減少しています。
    また、ガソリンを貯蔵する地下タンクの改修義務は、2010年6月の消防法改正により、大幅に強化されました。40年以上経過した地下タンクは、油漏れを防ぐために改修するか取り替えが必要になり、多額の費用がかかることも要因となっています。
    そして、ガソリンスタンド経営者の高齢化が進み、後継者が見つからないといったケースも増えています。これらの要因が複合的に作用し、ガソリンスタンドの経営環境は厳しさを増しています。

    しかし、地方と都市部ではガソリンスタンドが置かれている状況が異なり、ガソリンスタンド減少の差があります。地方では自家用車が生活の足として欠かせないため、ガソリンスタンドは生活に密着した存在で、暖房用の灯油販売も重要な収入源であり、地域住民の生活を支えています。都市部では、公共交通機関や鉄道網が整備されていることや、カーシェアリングなどの普及により自家用車を持つ必要性が減っています。

    ガソリンスタンドの新たな価値提供

    ガソリンスタンドの多角化は、コンビニエンスストアやカフェ、コインランドリーなどの導入が中心でしたが、一定の商圏や店舗面積が必要となるなど、様々な制約があり、大きな流れとして定着するには至っていません。

    ガソリンスタンドが利便性の高い場所にあることが多いことや、車両のスムーズな出入りを前提として設計されてる強みを活かし、ENEOSと三菱商事は、荷物の一時保管かつ最終配送拠点として活用する実証を2023年から首都圏を中心に行なっています。物流会社は、最終配送拠点から配送先までの区間であるラストワンマイルの作業が効率化し、配送にかかる距離や時間を減らすことができます。2026年度からは全国展開を含めた本格事業化を目指しています。これにより、ガソリンスタンドの付加価値向上し、新たな収入源となります。

    出光興産のガソリンスタンドを運営するヤブサキ産業は、カーライフサポートを超えたサービスを提供しています。それは、高齢者のユーザーを中心に、買い物代行や、スマホの設定サポート、ハウスクリーニングなど、生活のあらゆる困りごを支援するサービスを行なっています。サービスのきっかけは、長年の利用された方々の免許返納で、顧客との関係性が変化し、新たな事業展開に至りました。お客様との深いつながりから生まれたこの取り組みは、単なる多角化ではなく、顧客への深いリスペクトに基づいたものとなっています。

    今後ガソリンスタンドは、単にガソリンを販売するだけでなく、顧客に選ばれ続けるために、立地など施設の魅力や、お客様とのコミュニケーションの積み重ねにより信頼感を築くことも大切です。そこに、新たな発想が加えられ、顧客体験をより豊かにする取り組みが求められているのかもしれません。