東京証券取引所は、新興企業向けの「グロース市場」における上場維持基準を厳しくする方針です。現行の「上場10年後の時価総額40億円以上」という基準を、「上場5年後の時価総額100億円以上」に引き上げることで、企業の成長を促し、機関投資家の資金を呼び込む狙いがあります。
上場維持基準の厳格化の背景
東証は現在、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの市場区分を設けています。グロース市場には600社以上が上場していますが、比較的小規模な企業が多く、株価が低迷する企業が少なくありません。このため、機関投資家の関心が薄く、市場の活性化が課題となっていました。
東証が、2日に開催された自民党の資産運用立国議連の会合で示した改正案では、新基準を2030年以降、上場5年を経過した企業に適用するとしています。
「小粒上場」問題への対応
事業規模や時価総額が小さいまま上場し、その後伸び悩む「小粒上場」問題が課題となっています。東証の調査によると、2004年7月から2024年12月にかけて新興市場に上場した企業のうち、上場時の時価総額を下回る企業は45%にのぼります。反対に、上場時の3倍以上の時価総額に成長した企業は18%にとどまっています。
さらに、2024年4月1日時点で、時価総額が100億円に満たないグロース市場上場企業は約240社と、全体の7割を占めます。このため、新基準の適用により、多くの企業に影響が及ぶとみられています。
今後の展望
東証は4月下旬に開催する有識者会議で最終決定を行う予定です。また、これまで上場維持基準を満たしていない企業に適用してきた「経過措置」を3月から順次終了させており、3月期決算企業は2026年3月末までに基準を満たさなければ、同年10月1日に上場廃止となる可能性があります。
今回の上場維持基準の引き上げは、新興企業の成長を促す一方で、成長が停滞する企業にとっては厳しい環境をもたらします。東証の動向に注目が集まります。